顕微鏡の使い方(2014年神奈川県)
顕微鏡の操作方法
- 顕微鏡の操作方法
- 顕微鏡の使い方をなぜ学習するのか
- 1 設置する
- 2 レンズを取り付ける
- 3.明かるさを調節する。
- 4.観察したいものを視野の中央になるようにステージの上にのせる
- 5.最初は低倍率で観察する
- 6.プレパラートを近付ける。
- 7.レンズとプレパラートを離しながらピントを合わせる。
- 8.しぼりをあわせる
- 9.レボルバーを回し、対物レンズを変える。
- ポイント
顕微鏡の構造については別記事を参照
次の顕微鏡の使い方において、Xに当てはまる語句と使い方の順番を左から並べなさい(2014年神奈川)
a 観察したいものが視野の中央にくるようプレパラートをステージにのせ、プレパラートと対物 レンズをできるだけ近づける。
b ( X ) を調節して,観察したいものが最もはっきり見えるようにする。
c 調節ねじを,プレパラートと対物レンズを遠ざける方向に回しながらピントを合わせる。
d 対物レンズを最も低倍率のものにし、反射鏡やしほりを調節して視野全体が明るくなるように する。
顕微鏡の使い方をなぜ学習するのか
顕微鏡なんて、学校出たら使うことなんてないし、社会に出て役に立たないのになぜこんなのを覚えなくてはいけないの?中学2年生になり、勉強が次第に難しくなるにつれて、様々な疑問がわいてくる。
実際生活に結び付かないといって、嫌がるのが多いのが思春期の時期
しかし、顕微鏡の使い方を学ぶのはなぜかといえば、物事にはどんなことでも順序がある。そして、その順序通りに行うことが効率的、しかも失敗なく道具を壊すことも自らが傷つくこともない方法なのだということ。
それは、どんなものにも言えること。小学校で使うような解剖顕微鏡は使う順番を意識しなくてもどこを最初にやっても危険なことは少なかった。
しかし、顕微鏡は使い方を誤ると数万円もする高価な実験器具を壊したり、けがをすることにもなる。
失敗しないためにはどのような行いをすることが最善なのかを見通しを持って行動する、この能力をつけるために顕微鏡の操作を覚える必要があるのだ。
そのため、ただ単に方法を覚えるのではなく、なぜそういう方法なのかを考えながら覚えてほしい。
1 設置する
顕微鏡は両手で持ち運ぶ
- 顕微鏡のアームの部分をもって片手で持ち運ぶことはしてはならない。
- 顕微鏡の台座の部分やレボルバー。鏡筒の部分をどこかにぶつけることがあるからだ。
- ここで、顕微鏡の各部の名称が登場した。「アーム」「レボルバー」「鏡筒」「台座」なぜ顕微鏡の各部の名称を覚えなくてはいけないの?
という疑問があったら、こう答える。
道具の説明をするときに、道具の名称を使わなければ相手に伝わらないからである。顕微鏡の学習を通じて何を学習するか。道具には各部に名称があり、その名称を使うことで相手に情報を伝えることができるという能力を身に着けるということなのである。
顕微鏡は高価な実験器具であるとともに精密な実験器具でもある乱暴に扱うと外見は問題なく見えても内部が壊れてしまうということがある。
顕微鏡を壊さないために水平な台の上に置く。
どんな実験器具でもカビが生える。特に、顕微鏡でカビが生えて困るのはレンズの部分である。レンズにカビが生えてしまうとレンズにあるカビを観察しているのか、見たいものを観察しているのかがわからない。
そして、レンズのカビを採るのは難しい。それは、顕微鏡は焦点距離を考えて最高のパフォーマンス(倍率)で計測できるように各レンズは筒によって保護されているからである。この筒の内部の掃除をするためにはレンズを分解しなければならない。
精密光学機器であるので清掃後に元通りに修復するのには技術がいる。
そのため、顕微鏡のレンズはカビが生えるようなことが起きてはならない。
ではどうするか?
各レンズを使わない時には外しておき、それぞれをカビの生えない場所に保管する。
そのため、顕微鏡のレンズははじめ、すべて取り外されている。
中学校の学習ではこの取り外されているレンズを取り付けるという作業は行わないことが多い。それは時間を短縮させるためである。
しかし、この操作を行わないで保存している学校が多く、顕微鏡のレンズにカビが生えている学校が多い。
2 レンズを取り付ける
レンズがすでについているものを使うことが多いが、レンズを取り付けるのにも順番がある。
接眼レンズ、対物レンズの順番である。
上からレンズを付けるというのが基本である。
逆ではいけない
接眼レンズを入れた時に鏡筒の中にあるゴミが下の方に行く。
もし、対物レンズを先に取り付けてしまったら、ゴミがレンズに付着してしまう。
3.明かるさを調節する。
顕微鏡は直射日光の当たらないところで観察する。光がレンズに入り目に直接入ると目を傷めるからである。
しかし、倍率を挙げていくと視野が暗くなるのが顕微鏡である。
そのため、反射鏡を使い光をレンズに取り込む。反射鏡の平らな方は低倍率、反射鏡の凹面鏡になっている方が高倍率というふうで反射鏡を使い分けるのだが、最近は光源☽顕微鏡を使うことが多いのでこの操作が簡単になってきている。
4.観察したいものを視野の中央になるようにステージの上にのせる
プレパラートをいつ乗せるかという問題である、プレパラートを最初にセットしてから見え方を調節するというのが基本である。
逆の場合、二度手間になる
5.最初は低倍率で観察する
低倍率の場合、視野が広く、明るい。そして、ピントが合わせやすい。
6.プレパラートを近付ける。
ピントを合わせるときにレンズとプレパラートを離しながら合わせるのが基本である、逆をするとレンズやプレパラートを傷つけるからである。そのため、最初は近付けた状態から始める。
対物レンズを横からみながら少しずつ、調節ねじを回す。
7.レンズとプレパラートを離しながらピントを合わせる。
顕微鏡には2種類ある。鏡筒上下式とステージ上下式である。
4と5の操作が一番重要なのでこのところが逆になっている場合やこのようにする理由を聞かれることが多い
8.しぼりをあわせる
レンズに入る光は低倍率では小さく、高倍率では多くなるようにする。それは
倍率を挙げるほど視野が暗くなるからである。これを解決するのがしぼりである
9.レボルバーを回し、対物レンズを変える。
顕微鏡は低倍率でピントを合わせるとレボルバーを回すことによってふたたびピント合わせが必要でないというぐらいにできている
しかし、高倍率ほど焦点深度と呼ばれるものでピントの再調整が必要である。
焦点深度は
見たいものの上部、中部、下部というように深さを調節することである、
細胞を観察するときに、細胞の表面を見るのが、内部の部分を見るのかなどで見えるものが変わってくる。
植物細胞を観察すると低倍率では表面だけを観察するので、全体の葉緑体が見える
それが400倍から600倍と倍率を挙げると、葉緑体が細胞の中を動いているように見える(原形質流動の観察)
これをみるためには高倍率で焦点深度の調整もしなくてはいけない。
このように操作することが一番無駄のない操作方法である。
これ以外の方法で操作すると顕微鏡や観察者の目を危険にさせることがある。
「理科の世界2年」p86、p87大日本図書にある顕微鏡の使い方は操作方法だけでなく、その操作をしなければならない理由も含めて覚えること
これを踏まえて、最初の問題の並び替えをする。
d 対物レンズを最も低倍率のものにし、反射鏡やしほりを調節して視野全体が明るくなるように する。
a 観察したいものが視野の中央にくるようプレパラートをステージにのせ、プレパラートと対物 レンズをできるだけ近づける。
c 調節ねじを,プレパラートと対物レンズを遠ざける方向に回しながらピントを合わせる。
b ( X ) を調節して,観察したいものが最もはっきり見えるようにする。
dacb
X じぼり
ポイント
今の学習指導要領から小学生では「プログラミング」というのが始まった。
これは、ものごと行うにはどのような手順で行えばよいかというのを学習する科目である。
中学校学習指導要領では「見通しをもって実験を行う」ということが重要視されている。実験結果だけではなく、実験結果を導くためにはどのようなことをすればよいのかというのが大事になる。
結果だけでなくそこまで行く過程を重視するという考え方である。
この過程について、実験器具をどのように操作するのか、なぜそのような操作をするのかというのは、大事になってくる。
ただ順番を丸暗記するだけではない。意味を理解して覚える学習をしたい。