滑車と仕事の大きさ(2016年神奈川)
図のA~Dのように、物体Xに糸をつなぎ,それぞれ矢印の向きに糸をゆっくり同じ長さだけ引いた。 このとき、糸を引く力がした仕事の大きさを、図のAはa,Bはb, Cはc, Dはd とする。a~d の関係を、不等号(<)や等号(=)で示したものとして最も適するものをあとの1~4の中から一 つ選び、その番号を書きなさい。ただし、滑車の重さと糸の重さ,糸と滑車および斜面と物体Xとの 間の摩擦は考えないものとする。
定滑車は力の向きを変えているだけ
この問題を見ただけで複雑で嫌だなぁと感じると思う
押さえておくことは定滑車は力の向きを変えているだけ
上の赤い力(Xの重力)と青の力(張力)はつりあっていて大きさが同じ。
動かす距離が与えられていない問題では、わかりやすいように1とおいてみる。
Aの仕事は 青い力×1=赤い力×1
Bの仕事は 青い力×1=赤い力×1
同じ仕事である。
動滑車の個数の分だけ力は半分になる
Cは滑車がいっぱいあって嫌な図だなぁと思ってよく見ると、動滑車が一個だけだから力が半分になっているのは1つだけ、他は力の向きを変えているだけ
緑の力×2=赤い力というつり合いの式が成り立つ。
同じ距離1で緑の力で引くとすると
みどりの力×1=½×赤い力×1で a,bの半分の仕事になる。
糸の引く力はXの重力の斜面に平行な力である青の力
赤の力>青の力
青の力は 動滑車で力が半分になり緑の力になる
みどりの力×2=青の力
みどりの力=½×青の力
引いている距離を1とすると
仕事は みどりの力×1=½×青の力
青の力は赤の力より小さいから
½×青の力<½×赤の力
より
dの仕事<½×赤の力×1
d<c
これらをまとめると
d<c<a=b
ポイント
定滑車では力の向きが変わる、動滑車は力の大きさが変わるということをおさえる。
動滑車の問題は次の動画で計算をまとめた
ここで重要なのは動滑車は常に力は半分にはならないということである。
2019年 岐阜県の問題である。
図のように,ひもと定滑車を天井に固定し,動滑車を用いて、荷物を持ち上げる装置を作った。質量8.0kgの荷物がP の高さにあるとき、手がひもを引く力を力F₃とする。次に、 質量8.0kgの荷物をQの高さまで持ち上げて静止させた。このとき,手がひもを引く力を力F₄とする。カF₃と力F₄の大 きさとして最も適切なものを,ア~エから1つ選び,符号で書きなさい。ただし,ひもや滑車の質量,摩擦は考えないものとし,100gの物体に働く重力の大きさを1Nとする。
ア カF₃と力F₄の大きさは、ともに80N である。
イ カF₃と力F₄との大きさは、ともに40Nである。
ウ カF₃の大きさは、カF₄の大きさより大きい。
エ カF₃の大きさは、カF₄の大きさより小さい。
Pの位置の時に力は真上に引いていない
Pの位置のとき、左右に引かれているひもの間の角度を60度とする、
左右に30度、60度、90度の三角形の30度の部分が作用点に来る三角形を考えるとこの三角形の辺の比は1:2:√3になる。
2にあてはまるのが、F₃とすると、2√3≒3.46が80Nになる。F₃<80N
一方、Qの位置に挙げた時、左右に引かれているひもの間の角度を120度にすると
F₄=80Nになる。よってF₃<F₄
よってエになる。
力は半分の40Nにならない。この問題の間違いで多かったのはイであった。
動滑車を使っても力の分解の意味を理解していないと間違える。