拡散とは何か
拡散の意味
中学校の教科書である「理科の世界1年」(大日本図書)では「粒子が自然に散らばっていく現象」とある。
自然に散らばるとはどういう現象なのか?
この「自然に」という意味がよくわからない。何が自然なのか?
では、高校の教科書ではどうなるか。
化学基礎(東京書籍)では「容器全体に均一に広がる。自然に広がる現象」というように「自然に広がる」という表現が使われている。自然って何?
自然に濃くなることはない
という説明もされているが、自然についての説明がない。
日本全国の中学生はこのよくわからない「自然に散らばる」ということで拡散という現象を覚えている。
これが理科をむずかしくさせている。もっとはっきりした説明が欲しい。
生物基礎(啓林館)では、「溶質と溶媒の分子が均一な濃度になるように移動する現象」とある。
均一な濃度になるように移動?とはどのように移動することを言うのかについて説明されていない。
次の表現が、物質の移動方向について説明してある。
「 混合流体が高い濃度から低い濃度の所へと移動して、一様な濃度になる現象。分子の熱運動によって起こる」(デジタル大辞泉)
拡散とは
「溶質と溶媒の粒子が熱運動によって、高い濃度から低い濃度へと移動して、均一な濃度になる現象」
これが、拡散である。
砂糖が水に溶ける現象では、砂糖の粒子が集まっている所は濃度が高い。そこで、砂糖の粒子が集まっていないところへ移動する。このとき、砂糖の粒子が移動するだけでなく、水の粒子も移動することで砂糖の濃度を均一にする、
このため、熱運動が大きくなる、温度が高い条件では拡散の速さは大きくなる。
これが、「自然に散らばる」の正体である。この正体を説明せずに、なんとなくわかった気になっている人が多すぎるのは教科書があいまいな「自然に」という表現を使っているためである。この拡散に関する入試問題は水溶液の性質のところでは多く出題されている。
実際の入試問題
水の入ったビーカーに、色のついた砂糖(コーヒーシュガー)を入れて。ビーカーの口をラップフィルムで多い、砂糖の溶けていく様子を観察した。図1はその様子を表したものである。
拡散の図
次の図3は色のついた砂糖(コーヒーシュガー」が」水に溶けていく様子を、砂糖の分子を⚫とした粒子のモデルで表したものです。図1の5日後の状態を、粒子のモデルで書きなさい(2012年埼玉)
どう考えるか?
拡散の説明もあいまいな表現な中学校において、この問題は多く出題されている。(教科書に図が書いてある。)
答えの採点基準は粒子が均一に広がっている
とあるが、それだけではない、⚫の数が9つである。
容器全体に広がっている
これが記されていなければいけない。⚫の数がほかの数であったり、一部分で均一に広がっているというのでは正解にはならない。
対策
採点基準が多いので記号で選ばせる問題として多く出題されているが、思考力を問う問題として、自分で記入するというのも増えてくると思われる。