飽和溶液を冷やしたら時間とともに、どのように結晶が出てくるか
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再結晶の実験
資料
表は水100gあたりに溶かすことができる各物質の質量を表したものである、
(1)硝酸カリウムの析出量
問題
80℃の水200gに硝酸カリウムを溶かして飽和溶液を作り、40℃まで冷やした。再び取り出すことのできる硝酸カリウムの質量を答えなさい。
考え方
水100gに溶かすことができる溶質の質量を溶解度という。溶解度は溶媒の質量に比例する。
80℃の水100gには硝酸カリウムが168.8gとけて飽和溶液になる。
40℃の水100gには硝酸カリウムが63.9gとけて飽和溶液になる。
水の質量を200gにしたとき、水の質量は200/100=2倍の量になった。
80℃の時に溶ける量も2倍になった。168.8×2gとける。
40℃の時に溶ける量も2倍になった。63.9×2gとける。、
168.3×2ー63.9×2=2✕(168.3ー63.9)
=2✕104.4
=208.8g
析出する。
(2)食塩は再結晶できない理由は?
問題
塩化ナトリウムの飽和水溶液を冷却しても、結晶は少量しか取れなかった。その理由を説明しなさい。
考え方
硝酸カリウムの溶解度は20℃で31.6g、80℃で168.8g、温度差が80+20=60℃で溶解度の差が168.8-31.8=137.0gあるのに対して、
塩化ナトリウムの溶解度は20℃が35.8g、80℃が38.0g。温度差が
80ー20=60℃で溶解度の差が38.0ー35.8=2.2gしかない。
食塩は温度によって溶解度の差が小さい物質である
これを答える。
塩化ナトリウムは、水の温度が変わっても溶解度はほとんど変わらないから。
(3)冷やす時間と析出量の関係
問題
80°Cのミョウバンの飽和水溶液を20°Cまでゆっくりと冷却した場合の,冷却し始めてからの 時間と、取り出すことができる固体の質量の関係を表したグラフとして最も適切なものを、 次のア~エから選びなさい。ただし、水溶液を80°Cから冷却し始めたときの時間を0とし、 一定の時間に温度が一定の割合で低下するように冷却したものとする。
考え方
一定の時間に温度が一定の割合で低下するという条件が分かりにくいので
1秒で1℃さがるとしよう。
はじめ80℃の飽和溶液なので
水100gには320.7gとける
20秒で20℃さがり60℃になると57.3g溶ける。
このとき 320.7-57.3=250.4g析出していることになる、
さらに20秒20℃下がり40℃になると23.1gとけるので
このとき、320.7-23.1=297.6g析出している。
さらに20秒20℃さがり20℃になると11.4gとけるので
このとき、320.7-11.4=309.3g
時間経過 | 0秒 | 20秒 | 40秒 | 60秒 |
温度 | 80℃ | 60℃ | 40℃ | 60℃ |
析出量 | 0g | 250.4g | 297.6g | 309.3g |
最初、ドバっと多く出るが、それ以降は析出する量はそんなに多くない。
最初の析出量は0g
時間とともに析出量は増えていくが、比例直線ではない
縦軸も横軸も詳しい値が書いていないので戸惑ってしまうが、選択肢としてイを選ぶ
(4)飽和溶液を静かに置いたときの様子
問題
80℃のミョウバンの飽和髄溶液を20℃まで冷やしていったときに、水の中に溶けているミョウバンの様子を示しているモデルはどれになるか。ただし、「◦」はミョウバンの粒子を示し、析出している結晶は省略するものとする。
考え方
ミョウバンを冷やしていくと、溶け切らないミョウバンが結晶となり下に沈殿してくる。下に沈殿していると、下の部分が濃度が濃く、上の部分が濃度が薄いと思われがちである。
溶液とは均一に溶けている液体のことを言う。砂糖を水に溶かすと、溶けていると時は濃淡差が生じる。しかし、拡散という自然に均一になる現象によって濃淡差はなくなる、そのため、エのようになる。
(5)質量パーセント濃度を求める。
問題
水100gに硝酸カリウム60gを入れたところ、溶けきらなかった。そこで60℃まで水を温めたところ、全て溶けた。この水溶液を20℃まで冷やした。このとき硝酸カリウム水溶液の質量パーセント濃度はいくらか、小数第壱位を四捨五入して整数で答えなさい。
考え方
水100gに硝酸カリウムは31.6g溶ける。加熱して溶かそうが何しようが20℃の条件では31.6gしか解けないのである。
質量パーセント濃度=溶質/(溶質+溶媒)×100
31.6/(100+31.6)×100=31.6/131.6×100
24.0% 答え24%
何を出題しているのか?
見通しをもって問題を解く力が問われている
(1)では、水の量と析出量にはどのような関係があるかという問題である。
この問題の解き方として
水の量:析出量=100:(168.3ー63.9)=200:x
という公式を使って解くということが書いてある問題集があるが、公式に頼っているとどの問題にどの公式を使えばよいのかが分からなくなる。
公式は使わずに、100gのときはどれだけ析出するのか
200gのときはどれだけ析出するのかというのを考えて解く思考力である。
(2)では食塩は再結晶により物質を分けることには適していない理由を説明する問題である。この問題では溶解度の差が小さいことをどう言葉で表現できるかという表現力をとわれている
(3)では、グラフが出てくると右上の直線、または一定というのが理科の問題ではあるから、何も考えずにア、エを選択してしまいたがる中学生を引っかける問題である。
一定の割合で温度を下げるというのはどういうことなのかという思考力を問う問題である。
(4)では、溶液とは濃度が均一な液体のことを言う。それは飽和溶液でも飽和していない溶液でも、結晶が析出している溶液でも同じである。
溶液になるときに、拡散が起こるというのが教科書にあるため、結晶ができるときは逆に濃淡ができると思ってしまう受験生を引っかける問題である。判断力が必要である。
(5)では一度、すべて結晶を溶かしてから冷却するということをしているが、やっていることは20℃の水に硝酸カリウムを溶かして飽和溶液を作った時の飽和溶液の質量パーセント濃度を求めるという問題である。文章を読み、何を聞いているのかを判断する能力が必要である。
思考力、判断力が必要な問題を集めてみたが、これらの問題は今まで出てきた問題と同じである。ただ、考えるのに余計な情報が混ざっていてどの情報を使えばよいのかを判断する力が必要な問題である。このような問題が今後も増えると考えられる
そのため、問題を解くときには、「この問題は何を解かせることを目的としているんだ」と見通しを持つことが必要である。