深海に関する問題と見せかけて地上の問題(2014年岡山)
中学生の高志さんは、深海について調べた。次に示したものは,高志さんがまとめた レポートの一部と、同級生の理恵さんとの会話である。1~4に答えなさい。
地球最後の秘境「深海」の不思議を探る
○日本近海に深海が多い理由
・地球表面の約70%を海が占めていて,平均水深は、3800mに達する。深海とは、水深が200mを超える海のことで,暗黒,高圧の世界である。日本周辺の 海が深い理由は、大陸プレートである「北アメリカプレート プレート」「ユーラシアプレート」, 海洋プレートであ る「フィリピン海プレート」「太平洋プレート」という太平洋 4つのプレートの境界上に日本列島が位置しているかもしれない プレート からである。これらのプレートのうち、主に a海洋プレートが移動することによって、太平洋側の 海底に深い谷ができている。この谷が海溝である。
○深海を探る
周囲を海に囲まれている日本は、海洋 調査船を多く保有し,その中でも水深 6500mまでの潜水調査を目的とした有人 潜水調査船「しんかい6500」と 地球深部探査船「ちきゅう」 の 活躍が有名である。これらは、地球内部 の動きにかかわる現象を調べたり、生物 の起源や進化の過程の解明に向けて、未知の生物の調査を行ったりしている。また, 「ちきゅう」は、深海底を円柱状に深く掘り,地層の様子がわかる「コア」サンプルを 採取し、過去の地球の姿の解明に向けた調査も行っている。
1 下線部(a) について,(ア)~(ウ)に答えなさい。
プレートの移動方向
(ア)日本近海の海洋プレートは年間数cmの速さで移動している。これら2つのプレートの 移動方向を表している図として最も適当なのは、(1) ~ (4) のうちではどれですか。一つ 答えなさい。
海洋プレートは東から西(左から右)に移動している。この向きを示しているのは(3)
岡山の問題は最初に長い説明文が多い。そして、その説明文は問題に直接関係がないことも多い。
今回は、深海についての説明である。
説明文を全部読まなくても各問いには答えることができる。
この問題も、文を読んでいる下線部aに来た時に、「下線部がある。これは下線部に関しての問いがあるに違いない」と予測を付けて問題を見る。
確かに、プレートに関する問題である。
岩石がドロドロにとけたもの
(イ) 地球内部へ沈み込んだプレートが高温となり、岩石の一部が地下でどろどろに溶けたものを何といいますか。
「どろどろにとけた」、岡山の問題では「溶けた」と書いてあったが、それは間違いである。「熔けた」「融けた」という表現が正しい。圧力や熱によって固体から液体に変化しているからである。水などの液体に溶けたわけではないからである。
これも説明文とは関係が全くない。
マグマというこたえしかあてはまらない。
推し縮める力
(ウ)プレートが移動することによって、水平に堆積した地層を押し縮める巨大な力がはたら くと,地層が波打つように曲がることがある。この地層の曲がりを何といいますか。
この問題も説明文とは全く関係のない問いである。
力が加わることによって生じる地層の曲がりを何というかという問いである。
これは「しゅう曲」である。
これも言葉を知っているかという問題である。
1に関しては資料は全く必要としない知識を問うだけの問題である。
このことから説明文をすべて読んでから問に答えるのではなく。下線部があればそれに関する問題があるという解き方をしていくのがよい。
この問題では深海に関する問題は出題されていないのである。中学校で深海は学習しないので、深海についての問題は出しようはない。
会話文の問題の解き方
理恵:深海って光がほとんど届かないんでしょう。調査船は,どうやって深海の様子を探っているのかしら。
高志:「しんかい6500」は強力なライトを備えているけれど、深海では「マリンスノー」などの影響で10 m 先ぐらいしか見ることができないらしいよ。だから、地上に比べて4倍以上の速さで伝わるb音波を利用しているんだ。
理恵:「マリンスノー」ってどのようなものなのかしら。
高志:海底へ沈んでいく小型のプランクトンの死がいなどのことだよ。深海底でのc堆積して,地層を形成しているんだって。
この会話文を読みながら、いろいろな問題を推測できるようにしておこう。
「深海では光がない」
「光がないからライトで照らす」
「音波で調べる」
「音速は水中では空気中の4倍」
「ライトがあってもマリンスノーでみえない」
「マリンスノーとはプランクトンの死骸である」
ということが書かれてある。光に関する問題があるかもしれない。水中での光の屈折に関する問題?光だから光の直進性の問題?
ライトが出てきているから、電気に関する問題が出る?オームの法則?電力?エネルギー?
音波が出ている。音の高さと大きさに関する問題?
音速が出ている。音速と距離に関する問題?
マリンスノーが生物の死骸?堆積岩の説明?生物岩の説明?チャートの説明?
下線部は地層に引いてある。地層に関する問題?
と心に準備しておいてから、解く。
音速で距離を測る
2 下線部(b)について,音波は水深を測ることにも利用されている。水面から真下の海底に 音波を発射して海底で反射させ、再び水面にもどるまでの時間を計ると4.2秒であった。 このとき測定した水深は何m ですか。ただし、水中を伝わる音の速さは1500 m/秒とする。
音速の問題が出ている。
空気中の音の速さは 中学では340m/sで学習する。
音速は温度によって変化し。
音速=331.5+0.6×摂氏温度
で表される。0℃のとき
音速=331.5+0.6×0=331.5
10℃のとき
音速=331.5+0.6×10
33.1.5+6=337.5
14℃のとき
音速=331.5+0.6×14
=331.5+8.4=339.9
で約340m/sということで、よく「音速を340m/s」とするというのは14℃の空気中である
音速は空気中の4倍
340m/sの4倍 340×4=1360m/s
音は縦波である。縦波は媒質の密度が大きいほど速く伝わる。そのため、気体より液体。液体より固体の方が速い。
電車が近づいてくるとき、空気中の音は聞こえないが、線路のレールには音が速く伝わるのである。
今回、音の速さを海中で1500m/sとしている。
音が水底で反射して戻るまでの時間が4.2秒ということは
往復の距離=速さ×時間
なのである。
これは「はじき」で覚えている人が多いが。
という速さの定義から、両辺を時間でかけたもの
で約分をすることで
距離=という式を自分で導けるようにしたい。
往復の距離=
往復の距離=6300m
深さは6300÷2=3150m
生物岩を選ぶ
3 下線部 (c) について、堆積した生物の死がいがおし固められてできた岩石は,(1) ~ (5) のうちではどれですか。当てはまるものをすべて答えなさい。
(1) れき岩 (2)石灰岩 (3) 凝灰岩4)チャート (5) 砂岩
この問題の注意するところ、マリンスノーはプランクトンの死骸、
プランクトンといえば放散虫、放散虫といえばチャートとすぐに結びつけるのは間違いである。
問題は、生物の死骸が押し固められてできた岩石をすべて選び
になっているからである。チャート以外の石灰岩も選ぶ。生物岩をすべて選びなさいという問題なのである
(1)(5)そして泥岩は、粒の大きさで分けた堆積岩である。
粒の大きさで
2mm以上 レキ岩
2mmより小さくmm以上 砂岩
mm未満
凝灰岩は 火山灰が固まってできている。これは生物とは関係がない
(2)(4)を選ぶ
理恵:「ちきゅう」が採取している「コア」ってどんなものなの。
高志:図4のように深海底を掘り進めて,地層から抜き取った試料のことだよ。その試料をもとに、海底の地下の様子を柱状図で表すことができるんだ。
理恵:直接,見ることができない地下の様子を確認することができるのね。
d私たちの住んでいる地域も柱状図を公開していたわね。今度、一緒に 地下の様子を考えてみましょう。
海底の柱状図は中学の学習の範囲外であるから出題されることはない。
深海底の調査でコアを掘ることが地震を引き起こすもとになっているという考えもあるがこれについてはよくわかっていない。そのため、地震に関する問題も出題されない。
「私たちの地域の柱状図」というように、深海の話をしていたのが急に地上の話になっているので注意したいこれからの問題は地上の話なのである。
柱状図の問題
1図5は、下線部(d) の地形を模式的に示したものである。図5の実線は標高(海面からの高さ)が等しい地点を結んでおり、数値は標高を示している。図6は、図5のA~C地点の 柱状図である。この地域では、それぞれの地層は水平に一定の厚さで積み重なっており、 地層の上下の逆転や断層はなく、火山灰の層は一つしかない。(ア)(イ)に答えなさい。
(ア) 火山灰の層図)と砂の層の境目の標高は何mですか。整数で答えなさい。
A地点で火山灰は地表から15mの位置にある。
A地点の標高は50mである。そこよりも15m下より標高35m
B地点で火山灰は地表から25m。B地点の標高は60mで、そこより25m下の標高35m
C地点での火山灰の層は地表からb5m下でC地点は標高40mであるから。40mから5m下の35m
ABC地点どこも 標高35mの位置に火山灰の層がある
古いものの順に並べる。
(イ)図6の層(a)~(e)を、堆積した年代の古いものから順に並べ、記号で答えなさい。
火山灰の層が標高35mであるところからABC地点は傾きがないと考える。
火山灰をカギ層として考える。
火山灰の層より下にあるcの層が一番古く、火山灰の層より一つ上のbがその次、
aが新しい
cbaの順になる。
ポイント
岡山県の問題は、はやぶさ2を用いた、小惑星イトカワに関する問題やこの深海に関する問題など、中学で学ぶ内容から発展したところからの出題が多い。
しかし、たずねてくることは、近くの地層の問題と同じように解くことができる。
海底地形の問題でも海底コアの問題でもない。
深海の水圧の問題でもない