殺虫剤の成分がどれだけ濃縮されるか~生物濃縮~L湖での殺虫剤汚染(2020年千葉)
生物濃縮
図2は、L湖という湖に流入した殺虫剤の,生物体内における濃度をまとめたもの
です。単位の ppm は 100万分の1を表すので,L湖にすむ大型の魚の体重を1kg とすると,この魚の体内には2.05 mg の殺虫剤がふくまれていることになります。
体内に取りこまれた殺虫剤が分解されたり体外に排出された りすることはないものとしたとき、図2における大型の鳥は、L湖にすむ大型の魚を何匹食べ たことになるか。次のア~エのうちから最も適当なものを一つ選び、その符号を書きなさい。 ただし、大型の鳥の体重を 1.5 kg,大型の魚の体重を 400gとし、大型の鳥は大型の魚のみを 丸ごと食べているものとする。また,L湖以外に殺虫剤が流入した湖などはないものとする。
体重×濃度 で溶質の質量を求める
大形の鳥1羽の体重が1.5kgであることから。
ppmは百万分の1という意味で
1kgの鳥には16.4mgの殺虫剤を持っていることになる
大形の鳥が持つ殺虫剤の質量をとして
体重:殺虫剤=1:16.4=1.5:
大形の鳥1羽の体重1.5kgには24.6mgの殺虫剤を含む。
大形の魚1匹あたりの殺虫剤の質量をとして、
1kgの魚には2.05mgの殺虫剤が含まれていることから\dfrac
体重:殺虫剤=1:2.05= :
魚の数をz匹とすると
魚の数:魚の中の殺虫剤=1:=z:24.6mg
30匹
思い違いの計算ミス
この問題を見たとき、大型の鳥の濃度は魚の濃度の何倍かという計算をしがちである。
大形の鳥中の濃度 16.4ppm
大形の魚の濃度 2.05ppm
8匹
とおもわずやりたいところであるが、これが使えるのは、魚の体重と大型の鳥の体重が同じときだけである。
魚の体重は1.5kgで鳥の体重が1.5kgなら、この計算は使える。
体重が違う場合は含まれている量を求める
魚の体重は400g
鳥の体重は1.5kg
だから 鳥は魚の倍の体重があるのだから、濃度をそのまま比較することはできない。
鳥1羽あたりの殺虫剤の質量
そこで 鳥1羽が持っている殺虫剤の量を求める。
ppmは濃度の単位であるから
1.5kgの鳥の16.4ppmの殺虫剤というのは
の溶液に当てはまるのが鳥の体重、濃度に当てはまるのが
であり。質量パーセント濃度の計算の時はのときは、を使った。これは100分の1だから100で割ったのである。
ppmは百万分の1だから1000000で割るのである。
このように、濃縮の問題では%よりも小さい濃度であるppmや10億分の1を示すppbが使われることもある。
そんなの教科書に書いてないし知らないよぉという場合、問題文中に
単位の ppm は 100万分の1を表す
と書かれてあれば、それを使って計算するしかないのである。パーセントの意味が百分の1を表すという意味を理解していれば、それを応用した百万分の1も使えるという考え方である。
このようにして、鳥(という溶液)一羽に含まれる殺虫剤(溶質)の質量はkgと出せる。
しかし、kgのままで計算するのは計算ミスをしやすいので、1kgの百万分の一は1mgであるという関係を使って
=26.4mgと出す。
魚1匹あたりの殺虫剤の質量
魚1匹あたりの殺虫剤の量も同じように計算する 魚の体重400gに濃度をかければ、いい。
つまり g
をmgに変換するために1g=1000mgから
=mg
=mg
となるからである。だから最初に400gをkgで表す。
ここで、途中のかけ算や割り算の計算はしない。
(最初の も計算しない方が、後で約分をするときに考えやすい。
魚1匹あたりの殺虫剤の質量が分かれば,
の関係が分かるのである。
魚の数を求める
魚の数=鳥1羽の持つ殺虫剤の質量÷魚1匹当たりの殺虫剤の質量
と約分して計算することができる。
このようにして 魚の数を30匹と求めることができる。
ポイント
この問題は2020年に出題された問題で2021年に完全実施の学習指導要領に先駆けて先行試験的な問題である。今までにない問題なので正答率は低いものがあった。
しかし、新しい学習指導要領はこのような問題を解けるような中学生を育成するというのが目標なのでこれからこのタイプの問題が増えることが予測される。
- 単位の変換や単位の意味、そして使ったことのない単位でも思考判断して使う。
- 環境問題に計算問題をつかう。
- 計算問題は中学生が苦手としている濃度の計算