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水の電気分解における酸素原子と水素原子の質量比(2019年埼玉)

 

ゆとり教育の前の入試問題には当たり前のように出ていた水の電気分解による水素と酸素の体積比や質量比。

 2022年度の高校入試から、新学習指導要領改訂によりこれが復活する可能性があります。

すでに2019年度の埼玉県の入試には次のような問題が出題されました

水の電気分解装置

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図3のような電気分解の装置を使うと、陰極には12.29㎝³、陽極には図3の液面で示す量の気体が発生しました。これらの気体について、それぞれの密度から水素は0.001g、酸素は0.008g発生したことが分かりました、

(1)陰極と陽極に発生した気体はそれぞれ何か。化学式で答えなさい。

(2)陰極と陽極での気体の発生について電子e⁻を用いた式でそれぞれ書きなさい。

(3)陽極で発生した気体の体積を求めなさい。

(4)陰極と陽極の気体の体積の比を簡単な整数で答えなさい。

(5)酸素原子と水素原子の質量比を答えなさい

(6)(5)のように質量比が求められる理由を言葉で説明しなさい。

今まで出題されなかった理由

ゆとり教育でイオン、電子という言葉が中学校では長年、教育されてこなかった。

 電離の化学反応式も学習してこなかった。

それが、2021年からいろいろ復活する。 

水酸化ナトリウムは水の中で電離すると

  NaOH→Na⁺+OH⁻

になる。

これを電気分解するのだから、陰極(マイナス極)にはプラスの電気を持ったNa⁺ナトリウムイオン、陽極(プラス極)にはマイナスの電気を持ったOH⁻が近寄る。

 

ここで

 ナトリウムイオンは電子を受け取って

  Na⁺+e⁻→Na・・・・・①

という反応が起こって、ナトリウムができると考えることができる。

 しかし、実際にはそれは起こらない。

それは、Na⁺ナトリウムイオンはとてもイオンになりやすい物質で、水の中では単体のナトリウムNaとして取り出せないのである。

 2021年に完全実施の新学習指導要領から、

「金属によってイオンへのなりやさすが異なることを見出して理解すること」

が付け加わった。

 ナトリウムイオンはイオンになりやすい金属であり、そのイオンの成りやすさは水素イオンより大きい。

 このため、水素イオンが存在すると、

  2H⁺+2e⁻ →H₂・・・・・・②

という反応が陰極では①よりも起こりやすい。

しかし、用いた溶液が水酸化ナトリウム水溶液なので水素イオンはとてもすくないりょうであり、②の反応も起こりにくい。では何が起こるか。

 水が分解して 陰極では 水素発生

が起こる。水が分解するときに同時に水酸化物イオンOH⁻が発生する。

 H₂O→H₂+OH⁻

この式は、原子の数も違う、電気の数も違うので化学反応式としておかしい

まずは、電気の数は後回しにして、原子の数を合わせる。

 

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H₂Oの係数を1とおく。

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左辺のO酸素の数が1✕1となる。このことから、右辺の酸素も1になる。

(ここで最初にH水素を合わせないのは右辺で水素はH₂とOH⁻と二つに分かれているため同時に係数を決めるのが難しいが、O酸素は右辺はOH⁻水酸化物イオンだけなので、すぐ決まるから)

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右辺のO酸素がよりOH⁻水酸化物イオン1になる。

すると、OH⁻中の水素も1になる。

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左辺の水素の数を見ると2個であり、右辺ではすでに1OH⁻で1個H水素が使われているので、H₂の水素も1個でなければならない。

 2を何倍すれば1になるか、ということで½×2=1と考える。

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化学反応式の係数は簡単な整数比なので、全体を2倍して

   2H₂O →H₂+2OH⁻

次に電気の数を 電子e⁻を加えることで合わせる

 右側の電子の数が 2OH⁻ より 2である。

よって左側も、2e⁻を足す。

2H₂O+2e⁻→H₂+2OH⁻ ・・・③

これが陰極で起こっていることである。

 

次に陽極(プラス極)で起こっていること、マイナスの電気を持った陰イオンが近寄る

  OH⁻が近づきO₂になるという反応が起こっている。

  OH⁻ → O₂

水素の数が左が1あるのに右はない。原子は消滅しないので

水酸化物イオンから 陽極では酸素発生

  OH⁻ → O₂ + H₂O

これでも原子の数が会わないので原子の数を合わせていく。

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左辺の水素の数を決めたので右辺のH₂Oの数が決まる。

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右辺のH₂Oの数を決めたので、O₂の係数¼になる。

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係数を整数なので 全体を4倍する

 4OH⁻ → O₂+2H₂O

電子で電気の数を合わせるため、右辺に4e⁻を書き加える。

 

4OH⁻→O₂+4e⁻+2H₂O・・・④

 

③と④の式はこのように導くことができる。暗記した方が速いと思うかもしれないが、2022年度の高校入試から暗記では対応できなくなる可能性がある。

それは、新学習指導要領に

「電極で起こる反応をイオンのモデルと関連付けて行うこと」

となっているので、大日本図書の教科書「理科の世界3年」p183にある図がそのままテストに出る可能性があるからである。

 

この分野は発展となっているからテストにはでないのではと思うかもしれないが、

実際に2019年に埼玉の公立高校入試に出題されているので、発展が出題されないことはない。

 

発展であっても、長い文章問題にして出題される可能性がある。

 

陽極と陰極に発生した気体

陽極はOH⁻が電子を失い酸素O₂発生

陰極はH₂Oが電子を得て水素H₂発生

 すごく紛らわしくてどっちがどっちだかわからなくなる。

 それは、この水の電気分解水酸化ナトリウム水溶液というアルカリ性の水溶液だからである、酸性の水溶液なら、プラスの電気を持った水素イオンH⁺があるので H⁺はマイナスの方に引かれる。ということで陰極で水素発生がイメージ出来て、逆側の陽極は酸素発生である。

 これは電気泳動の実験でも同じである。

電気泳動の実験は水酸化ナトリウム水溶液を使ったものと塩酸を使ったものがある

 

水酸化ナトリウムを使ったもの 

youtu.be

塩酸を使ったもの

youtu.be

陽極と陰極での化学反応式

陽極では

4OH⁻→O₂+4e⁻+2H₂O・・・・④

 陰極では

2H₂O+2e⁻→H₂+2OH⁻ ・・・・③

 

大日本図書の教科書「理科の世界3年」p183には

4H₂O+4e⁻→2H₂+4OH⁻・・・⑤

と書いてある。簡単な整数比なら③が正しいはずなのになぜ簡単な整数比ではないの?

というと

 陽極 4OH⁻ → O₂+4e⁻+2H₂O・・・④

 陰極 4H₂O+4e⁻→2H₂+4OH⁻・・・・・⑤

で4e⁻という電子の数を陽極と陰極でそろえるためである。そして④+⑤をすると

  4OH⁻+2H₂O+2H₂O4e⁻→O₂+4e⁻2H₂O+2H₂+4OH⁻

両辺で同じものを消すと

   2H₂O → 2H₂+O₂

になる。水分子2個が 2個の水素分子と1個の酸素分子になる。

これを示すために 教科書では③を2倍した形で書いてある。

 化学反応式で書きなさいという問題では ③を書く。

問題の中に⑤のように係数が一部分でも書かれてある次のような問題

  4H₂O+(  )e⁻ → 2H₂+(  )OH⁻

の(  )に当てはまる数字を答えなさい。

とあれば、4と答える。

気体の体積を図から求める

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最近の出題では、目盛りの上で読み取る問題よりもこのような問題が多い。

下に行くほど値が大きくなる目盛りである

1目盛りは0.1mLよりその十分の一 0.01mLまで、目分量で読み取る。

ここでは6.1mLと6.2mLの間にあり、6.1mLの目盛りの方が近い

6.14mLと読める。

6.13mL、6.15mLでも正解である。(測定誤差も正解になっている)

酸素と水素の体積比

陰極で発生した12.29mLが水素

陽極で発生した6.14mLが酸素」であるということが分かっていることが条件

水素:酸素=12.29:6.14≒2:1

簡単な整数比で 水素:酸素=2:1になる。

酸素原子と水素原子の質量比

酸素の質量が0.008g、水素の質量が0.001gである。

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埼玉県の問題では図4が与えられていて、原子の質量比を考えさせている。

 水素のと酸素の気体の質量比は1:8である。水分子1つは水素原子2個と酸素原子1個からできているので、原子1個当たりの質量比で考えると0.5:8である。よって水素原子と酸素原子の質量比を簡単な整数比で表すと1:16となる。 

 

これらの問題は高校レベルの問題である。(大学受験レベル)

しかし、電気分解の実験の過程で原理を見出し、理解するというのが2022年度からの学習指導要領なので、「次の文章を読んで、最も適するものを次の中から選びなさい」という問題では出る可能性が高い。