マツは汚染した大気を吸っている。(2009年北海道)
マツの葉を使った大気汚染物質の問題
観察
図1のようなマツの枝の部分を用意し,雄花 雌花を観察すると、₁むき出しになった 胚珠が見られ,子房は見られなかった。
ま た,₂雄花を軽くたたいて取り出した小さな粒をスライドガラスにのせ,水を1滴落としてカバーガラスをかけ,顕微鏡で観察 すると,図2のように見えた。
次に,枝か ら葉を,1枚取り, スライドガラスにその ままのせ,₃葉の気孔を顕微鏡で観察する と,図3のように、よごれている気孔が見られた。
調査
ある町の地点A~Dの周囲における住宅の密集の度合いをそれぞれ調べ,度合いの図4 地点A~Dの位置と住宅の密集 高い所と低い所に分けたところ,結果は図4のようになった。
次に,地点A~Dの自動車の交通量(台 数)を午前8時から午後6時まで調べ, 1時間当たりの交通量をそれぞれ求めたと ころ、結果は表1のようになった。
さらに,地点A~Dにあるマツから葉を各地点で 10枚ずつ取り,葉1枚当たり50個の気孔を顕微鏡で観察した。50個の気孔のうち,よ ごれている気孔の数を調べ、その地点 ごとに葉10枚で平均したところ,結果は表2のようになった。
マツについて答えなさい
問1 観察について,次の(1), (2)に答えなさい。
(1) 下線部1のような特徴をもつ植物の組み合わせとして正しいものはどれか,ア~エから
選びなさい。
ア スギ,トウモロコシ
イ サクラ, アブラナ
むきだしになった胚珠が子房に包まれていない・・・裸子植物のことである。
裸子植物の組み合わせは ウ
(2) 次の文の(a)に当てはまる語句を普きなさい。また, (b)に当てはまるも のを、ア,イから選びなさい。
下線部2の粒は、(a)( 葉緑体 )である。また,この粒がマツの雌花の胚珠につき,胚珠全体が発達すると,(b){ア実 ィ 種子 }になる。
顕微鏡での観察方法
問2 この観察において,下線部2と下線部3がはっきり見えるようにするためには,それぞ
れどのように電気スタンドの光を当てたらよいか,最も適当なものを,ア~ウからそれぞれ 選びなさい。
顕微鏡で観察するときに、反射鏡に光を当てて、下から光を透過させてみるか
上から光を当てて、上から反射光を見るかがある。
透過光の場合 イのように光を当てる
反射光の場合 ウのように光を当てる
2の花粉の場合、光が透過するので、透過光で観察できる よって イ
3の気孔の場合、マツの葉は光を透過させることはできない。そのため、反射光を使う。このため ウ
なぜ、マツを使うのか?
気孔の観察には表皮が薄くむけるツユクサやムラサキツユクサがよく用いられる。
これらの植物と異なり、マツの気孔はくぼんでいる特徴がある。
くぼんでいるため、そこに、大気汚染物質をためやすいという特徴がある。
この特徴を利用してマツを大気汚染を調べる樹木に使う。
この観察からわかること
問3 この調査における,「住宅の密集の度合い」, 「自動車の交通張」,「よごれている気孔の数」の調査結果から,最も関係が深いと考えられる組み合わせを,ア~ウから選びなさい。 また,選んだ組み合わせにおいて、2つの間には,どのような関係があるか,調査結果に もとづいて簡単に説明しなさい。
ア 「住宅の密集の度合い」と「自動車の交通量」
ィ 「自動車の交通量」と「よごれている気孔の数」
ゥ 「住宅の密集の度合い」と「よごれている気孔の数」
住宅の密集の度合いと自動車の交通量の関係をみると
密集の度合いが低いB 密集の度合いの高いDが自動車の交通量が多く、密集の度合いと自動車の交通量との関係はないと考えられる。
自動車の交通量と汚れている気孔の数
自動車の交通量の少ないA,C地点は汚れている気孔の数は少ない。
自動車の交通量の多いB、D地点は汚れている気孔の数は多い。
このことから、交通量と気孔の数には関係があると考えられる。
住宅の密集度合いと汚れた気孔の数
住宅の密集度合いの低いBと住宅の密集度合いが高いDにおいて汚れた気孔の数が多いことから、これらには関係がない。
このことから
イ
気孔の汚れは、自動車の交通量が多いほど大きい。
気孔は自動車が出す排気ガスによって汚れる。
住宅の密集と自動車の量は関係がないことから住宅の密集と気孔の汚れは関係がない。
大気汚染を植物で知る
大気汚染をしる方法として使われるのが、指標植物である、
指標植物として用いられるのはアサガオである。気孔で大気汚染物質を取り込むので、大気汚染が進んでいる場所ではアサガオの葉が枯れていく。
アサガオの葉の枯れ方と大気汚染物質との量には高い相関関係があるのでこれを指標植物として用いる。
指標植物としてつかわれるもの
- どこの場所でも観察できるほど育てやすい植物、また、生育場所が広範囲な植物を使う。
育てにくい植物やあまり存在していない植物では評価しにくい
- 大気汚染物質と相関関係がある植物を使う。
大気汚染とは全く反応が異なる生物では指標生物にはならない。
- サンプルが大量に得られるものを使う
葉の量が少なくサンプル数が少ない植物では比較しにくい
- 成長が均一なものを用いる
アサガオの中でも品種として、スカーレットオハラを使う。品種を限定することで同じようにどこでも育ち、同じような反応を示すことができる。オゾンへの感受性も研究されているのでこの品種を用いることが多い。
今後の出題傾向
このマツの葉を使った大気汚染物質の調査は昨年まで「身近な自然を調べる」ということで中学3年生の最後のところで学習する内容であった。
そのため、出題する県も少なく、過去問でも多くはない。
しかし、2021年から新学習指導要領の完全実施により、「環境問題」は中学校の全学年で扱うことになった。
特にこの気孔にかんすることは、中学2年生で学習することなので、関連性は大きくなる。
中学二年生では持続可能な社会(SDGs)を学ぶことになっている。この「持続可能な社会」という語句も過去に何度か出題されている。今後は出題が多くなるであろう。