見通しをもって実験する(2018年山口)
新学習指導要領から重視
化学反応の速さを決める条件(2018年山口)
化学反応の速度に関しては高校の化学で学習する。
化学反応には、発熱反応と吸熱反応があるというのは中学2年で学習するが、この発熱反応、吸熱反応と化学反応の速度との関連は中学では学習しない。
それなのに2018年の山口では次のような問題が出題された。
化学変化の激しさに興味をもったYさんは、マグネシウムが塩酸にとける反応に
おいて,塩酸の温度,濃度,体積が反応の進む速さと関係しているかどうか調べる ために,次のように仮説をたてて、探究を行うことにした。
仮説1 塩酸の温度が変わると反応が進む速さも変わる。
仮説2 塩酸の濃度が変わると反応が進む速さも変わる。
仮説3 塩酸の体積を変えても反応が進む速さは変わらない。
はじめに,仮説1,2を検証するために、3%の塩酸とマグネシウムリボンを用いて 次の実験を行った。
[実験]
1 ビーカーA,Bにはそれぞれ3%の塩酸を50mL 入れ,ビーカーCには3%の塩酸 1を25mL 入れたあと水を加えて50mLにした。2 1のビーカーのうち,ビーカーBだけ氷水の入った水そうに入れ,しばらく 1 冷やした。3 ビーカーA~Cの水溶液の温度をはかり,表1に記録した。
4 マグネシウムリボンから,質量が0.1gのマグネシウム片を3本切りとった。
5 ビーカーA~Cに,それぞれので切りとったマグネシウム片を1本入れ, マグネ シウム片がすべて反応してなくなるまでの時間をはかり表1に記録した。
6 ビーカーAとBの結果から仮説1が,ビーカーAとCの結果から仮説2が, それぞれ正しいことが確かめられた。
温度による反応の激しさ
同じ体積の塩酸50cm³と同じ質量のマグネシウムリボン0.1gを温度という条件の違いだけで反応を比較した。
氷で冷やすという低音のときが反応に時間がかかった
塩酸の濃度による反応の激しさ
塩酸50cm³と塩酸25cm³+水25cm³で濃度を小さくした液を使っての比較
濃度が低いほうが反応に時間がかかった。
Yさんの考察は正しいか?
これらの結果から仮説1と仮説2が正しいとYさんは考察しているが、この考察は正しいかどうかはわからない。
なぜなら、温度による実験では、冷やした時の条件と22℃の条件という二つの条件しか比べていない。冷やした時の反応速度は小さくなったが温度を上げると反応速度はどうなるのかという検証はしていない。
高校レベルでは、反応速度は10℃上昇するごとに2~4倍と学習するが、Yさんは2つだけしか比較していないからわからないのである。
つぎに仮説2の検証である。
塩酸50cm³と塩酸25cm³に水25cm³を加えた溶液で反応速度を比較している。
同じ体積の溶液で濃度を2倍に薄めた液との比較で反応速度を比較しているが、2倍に薄めた時のみが反応速度を遅くしているかはわからない。
高校レベルでは、反応速度は温度によって決まる速度定数に濃度をかけたものによって決まると学習するが2つだけの比較で考察するのは無理がある。
この実験を入試問題にしたこと自体無理があるので、この現象に対する問いではなく
実験全般に関する取り組み方の問題になっていた。
安全教育
見通しをもって実験をするということで、実験への取り組み方が出題されることが多くなった。その一つが安全教育である。
(1) この[実験]のように薬品を用いるときや,細かな破片が飛び散る可能性のある 操作を始める前には、目を守るために着用するものがある。着用するものは何か。 答えなさい。
目を保護するために保護メガネが必要である、今のご時世ではフェイスシールドも必要になるのかもしれない。
中学校の実験では中学2年生で消化の実験で「だ液を使った実験」を行うのが定番になっていたが、現在は感染症対策のためにこれは行われにくくなった。代わりの実験が必要になってきている。
ヒトの口の中の細胞をとって顕微鏡で観察するということもされなくなってきている。これも感染症の問題もある。
薬品が服に着く危険があるということで今後、実験には実習着で参加すること
ということになる可能性がある。
現在、実験ではジャージに着替えること、また白衣を着用することということになっているところもある。
ジャージはほかの実技系の科目と併用することで衛生面に問題がある。
白衣はそでの部分や服に引っかけて器具を倒す危険もあるのでまだ実験になれていない中学生に着用させるのは着用していないことよりも危険であると考えられる。
一番、実験で好ましいのは実習服の着用である。しかし、更衣室が学校には備わっていない、また着替える時間もない、そして実習服、ジャージ類など個人のものを収納するロッカーが整備されていない、などの問題がある。
感染症対策から保護メガネは生徒一人ひとりが持つべきものだが、保護メガネを備えている学校がどれだけあるのかはわからない。(高校ではそろえていないいないところが多い)
仮説1,2の検証は出題されていない
反応速度に関する問題自体が中学レベルではないので出題されなかったかもしれないが見通しを持った実験をするのが今後の目的ならば、この実験の改善点を考察する問題も必要であると思われる。
実験方法に関する出題
用意したマグネシウムリボンの全体の質量と長さをはかると,7.5g, 6m であった。図1のように,このマグネ シウムリボンから0.1gのマグネシウム片 を切りとる場合, マグネシウム片の長さ を何cmにすればよいか。求めなさい。
6mが7.5g、mが0.1gこれを比例式にする。
長さ:質量=6m:7.5g=
8cm
実験室あるある
実験の説明をして、「それでは実験を始めてください」といった瞬間
「先生、なにをすればいいのですか」と聞いてきたり、何をしていいかわからないで何もしない生徒、そして実験が怖いといって何もしない生徒
これはよくある風景である。こういう生徒が多くいるのが現状なので、新学習指導要領が目指す見通しを持って行動するという生徒は果たして育成することはできるのかは不明である。一部の積極的に行動する生徒がいるとそれの影響でクラス全体が動くということがある。中学校段階ではそれがあるが、高校以上では積極的に行動する生徒が上位行に進学してしまうとそれ以外の生徒では、実験へ取り組まない生徒が多くなる傾向がある。
中学校の段階で実験には参加せず見ているだけという生徒が集まる高校ではその傾向が強い。
その生徒にとって、このマグネシウムリボンの問題は難題かもしれない。
仮説3について実験方法と結果を推測する
Yさんは,仮説3を検証するため,新たにビーカーDを用意し、塩酸に0.1gの マグネシウム片を入れてすべて反応させ,マグネシウム片がなくなるまでの時間を ビーカーAの結果と比べることにした。
ビーカーDの条件をどのようにすればよいか。ビーカーDに入れる塩酸の「温度」 「濃度」「体積」について,それぞれ適切なものを下の1,2から1つずつ選び, 記号で答えなさい。
また, ビーカーDの「結果」がどのようになれば、仮説3が正しいと考察できるか。 簡潔に述べなさい。
1 ビーカーAの条件とそろえる。
2ビーカーAの条件と変える。
実験では条件を変えること以外はすべてそろえなくてはいけない。
仮説3は溶液の体積だけかえるから、それ以外の条件肺同じにする
同じにするもの・・・・ビーカーDの塩酸の温度、濃度、マグネシウムの質量
買えるもの・・・・塩酸の体積
よって 「濃度」「温度」は1
「体積」は2
そして、仮説は「体積を変えても反応速度は変わらない」のであるから。
マグネシウムリボンが溶けおわるまでの時間はかわらない。
ビーカーAの結果と等しくなる