電離の様子を式で表す(2016年三重)
塩酸と水酸化ナトリウムの反応
《実験)
酸の水溶液とアルカリの水溶液を混ぜ合わせるとどうなるかを調べるため、うすい塩酸,うすい水酸化ナトリウム水溶液を用いて, 次の1~3の実験を行った。
1 うすい塩酸5cm³をビーカーにとり、BTB溶液 を2.3滴加え、図1のようにガラス棒でよくかき ガラス棒 混ぜながら、うすい水酸化ナトリウム水溶液を少し ずつ加えていった。表1は、うすい水酸化 ム水溶液3cm³を加えるごとにできた水溶液の色を記録したものである。
2 うすい塩酸5cm³を別のビーカーにとり、図2の図2 ようにガラス棒でよくかき混ぜながら、うすい水酸 ガラス 化ナトリウム水溶液6cm³を加えた。できた水溶液 の一部をガラス棒でスライドガラスの上にとり、 蒸 発させたところ白い固体がのこった。
蒸発させる前を考える
蒸発させてのこった白い固体は電解質である。この物質の電離のようすをイオン式で表しなさい。
塩酸の水溶液の中では、塩化水素が次のように電離している。
HCl→ H⁺ + Cl⁻
塩化水素 水素イオン 塩化物イオン
水酸化ナトリウム水溶液の中の水酸化ナトリウムは次のように電離している。
NaOH → Na⁺ + OH⁻
中和はいつから起こる?
塩化水素と水酸化ナトリウムが反応すると
HCl+NaOH→H⁺+Cl⁻+Na⁺+OH⁻
H⁺ + OH⁻ → H₂O
の反応が起こるので
HCl+NaOH→Cl⁻+Na⁺+H₂O
が起こる。
このとき、塩酸の数の方が多いとき、塩酸が水酸化ナトリウムの2倍のようなとき
2HCl+NaOH→2Cl⁻+2H⁺+OH⁻+Na⁺
ここで水素イオン2個をバラバラにしてみる。
2HCl+NaOH→2Cl⁻+H⁺+H⁺+OH⁻+Na⁺
水素イオンと水酸化物イオンが反応して水になる
2HCl+NaOH→2Cl⁻+H⁺+H₂O+Na⁺
H⁺が残っているのでこの水溶液は酸性である。
酸性の水溶液にアルカリ性の水溶液を加えると、酸の性質を打ち消す。これを中和という。
テストによく出るポイント
中和は酸性とアルカリ性の水溶液を加えた瞬間に起こり始める。中性になることが中和ではない
この2011年の問題でも次のような問題が出題されている。
次の文中の,( ), ( い )に入ることがらとして最も適当なものはどれか,下のア~オからそれぞれ1つずつ選び、その記号を書きなさい。
中和が起こっているのは、うすい水酸化ナトリウム水溶液を(あ)ときから、うすい水酸化ナトリウム水溶液を(い)ときまでである。
ア.加え始めた イ.3cm³加えた ウ.6cm³加えた エ.9cm³加えた オ.12cm³加えた
BTB溶液で黄色が酸性 みどりが中性 青がアルカリ性
AB 酸性で H*の性質を打ち消した後、H⁺が残っている
C 中性で H⁺の性質を打ち消したあと、H⁺もOH⁻も残っていない
DE アルカリ性。H⁺の性質を打ち消した後、 加えた水酸化ナトリウム中のOH⁻が余っている。
(あ)は加えはじめアを選択する。
(い)は3cm³を2回加えた6cm³の時にちょうど打ち消しが終わっているので6cm³のウを選ぶ。
この問題は引っかけでこのように出ることもある
同じ濃度の薄い塩酸5cm³が入ったビーカーをA,B,C,D,E、Fと用意する。
そこに同じ濃度の水酸化ナトリウム0cm³、3cm³、6cm³、9cm³、12cm³をそれぞれ加える。どのビーカーが中和しているか。
中和は中性の時に起こっていると思い込んでいると、Cだけを選択してしまうが、
A~Cはもちろんのこと、水酸化物イオンが残ってしまっているEFも中和は行われているのである。
中和はH⁺とOH⁻が反応しているときに起こる。
3cm³ずつ加えている場合、9cm³、12cm³では残っているH⁺がないので中和は起こらないが、別々に実験するとすべて中和しているのである。
今回、塩酸5cm³に水酸化ナトリウム5cm³加えている。
水酸化ナトリウムが6cm³のとき、水酸化物イオンと水素イオンが同じ量になるわけだから、それよりも少ない5cm³では水素イオンの方が残って酸性である。
水溶液中には
H⁺ Cl⁻ Na⁺ が残っている。
ここで、H⁺が残っているということは。Cl⁻はNa⁺より多い。
この水溶液を蒸発させると 水と塩化水素 HClが蒸発し、Na⁺ とCl⁻が残る
残った物質は塩化ナトリウム NaClであり、その電離の様子は
NaCl→ Na⁺ + Cl⁻
で表される。
ポイント
中和は酸とアルカリが打ち消しあっている時を言う
塩酸と水酸化ナトリウムの反応で塩酸が余っているときは蒸発させると塩酸も蒸発してなくなり、塩化ナトリウムだけになる
水酸化ナトリウムの電離の式、塩酸の電離の式、塩化ナトリウムの電離の式の3つは書けるようにしておく。
中和のイオン式 H⁺+OH⁻→H₂Oも書けるようにする
電離の式では左辺と右辺で電気の総量は同じになる