熊本と札幌の透明半球の比較(2018年熊本)
綾香さんは熊本県のある場所で、ある日の日中に、画用紙の上に透明半球を固定して水平に置き、太陽の1日の動きについて観測を行った。10図は、9時から17時までの1時間ごとに、ペン の先端の影が点Oと一致するようにして太陽の位置を記録し,それらの点をなめらかな曲線で結 び、透明半球のふちまでのばしたものである。ただし,点Xと点Yは,のばした曲線と透明半球 のふちが交わった位置を表し、点では、太陽が南中したときの位置を表している。
太陽の日周運動
(1)10図に見られるような太陽の動きは,地球の( 自転 )という運動によって起こる見かけの動きであり,このような太陽の1日の動きを、太陽の(日周)運動という。
7時40分はどこか?
(2) 綾香さんは,10図の記録をもとに,観測を行った日の登校時刻である7時40分の太 陽の位置を,透明半球にかき入れることに した。そこで、1時間ごとに記録したとなり 合う点と点の間の曲線の長さを測定したと ころ、すべて2.7cm であった。また,9時に記録した点と、点Xの間の曲線の長さは9.9cm であった。観測を行った日の7時40分の太陽の位置は,点Xから何cm 離れた曲線上の位置に かき入れるとよいか、答えなさい。
1時間(60分)の太陽の動きは2.7cmである。
60:2.7=200:9と簡単な整数で表すことができる。
9時から7時40分までは1時間20分前であるから80分前
ycm前とすると
200:9=80:y
200y=
y=
y=
y=3.6cm
9時まで9.9cm
7時40分から9時まで3.6cm
よって、9.9cm-3.6=6.3cm
Xから6.3cmのところが7時40分である。
この透明半球の問題では日の出の時刻を求める問題が多い。
日の出の時刻は次のように求められる。
9時からXまで9.9cmということは、日の出の時刻はx分前とすると
200:9=x:9.9
9x=
x=
x=220
9時から220分前は3時間40分前
5時20分になる。
札幌での透明半球を書き入れる。
次に綾香さんは、10図の観測を行った熊本と、1表 札幌における太陽の1日の動きを比べるため, 観測を行った日の昼の長さと太陽の南中高度についてそれぞれ調べ,11表のようにまとめた。
(3)12図は、10図の透明半球を西側から真横に見た模式図である。11表から,10図の観測を 行った日に札幌で同様の観測を行った場合, 札幌における太陽の動きはどうなると考えら れるか。12図を参考にして、解答用紙の図中 の.....................をなぞって一で示しなさい。
隈本と札幌では札幌の方が緯度が高い。ある日の南中高度は緯度が大きくなるほど低くなる。
ある日が夏至の場合、南中高度は90―緯度+23.4
だからである。11表から札幌と隈本は札幌の方が高緯度にある。
熊本の南中高度∠ZOS=78.9°
札幌の南中高度∠AOS=68.6°
より緯度の差は78.9度-68.6度=10.3度
札幌の昼の長さ15時間5分
熊本の昼の長さ14時間8分
より、高緯度の方が昼の時間が長い。
昼の時間が長いというのはより、北寄りから太陽が昇るためである。
逆に昼の時間が短くなる時は南寄りから太陽が昇る。
これを考えるとyよちも北寄りから上る。そしてAを通る。
このようになる。
札幌と隈本の南中高度と昼の長さ
さらに綾香さんは、熊本と札幌の、季節による昼の長さの変化と太陽の南中高度の変化をそれ ぞれ調べた。13図は,熊本と札幌における昼の長さの変化を、14図は、熊本と札幌における太陽の南中高度 の変化を,それぞれ示したものである。
(4) 13図について正しく説明しているものはどれか。次のアーエから二つ選び,記号で答えなさい。
ア夏至の日と冬至の日のどちらも、札幌の昼の長さの方が、熊本の昼の長さよりも長い。
夏至は札幌の方が長いが、冬至は熊本の方が長い。のでこれは誤り
イ 春分の日と秋分の日のどちらも、熊本の昼の長さと札幌の昼の長さがほぼ等しい。
春分の日と秋分の日は世界中緯度に関係なく、昼の長さと夜の長さが同じであるからこの記述は正しい
ウ春分の日から夏至の日にかけて、熊本と札幌のどちらも昼の長さが長くなっていくが、熊本の昼の長さの方が、より長くなっていく。
春分の日から夏至にかけて熊本も札幌も昼の長さが長くなっている。
札幌の方が昼の長さがより長くなっているので、この記述は誤り
エ 熊本における夏至の日の昼の長さと冬至の日の昼の長さとの差の方が、札幌における夏至の日の昼の長さと冬至の日の昼の長さとの差よりも小さい。
熊本は夏至の昼の長さが14時間20分 冬至の昼の長さが10時間
その差は4時間20分
札幌の夏至の昼の長さが15時間30分、冬至の昼の長さが9時間
その差が6時間30分
熊本の方が札幌よりも昼の長さの差が小さいのでこれは正しい。
よって、正しい記述は イとエ である。
この問題のように、与えられた資料について正しいものを選びなさいという問題がよく出題される。今回、正しいものを2つ答えなさいとあったが、正しいものをすべて選びなさいという問題もありうるので他の選択肢がどこが誤りなのかを言えるようにしておくこと。
(5)綾香さんは、14図をもとに、季節による太陽の南中高度の変化について次のようにまとめた。
1,2の()の中からそれぞれ正しいものを一つずつ選び,記号で答えなさい。
・熊本と札幌のそれぞれの場所で、季節によって南中高度が変化するのは、地軸が地球の 公転面に垂直な方向に対して一定の角度で傾いているからである。この地軸の傾きは、 それぞれの場所における夏至の日の南中高度と、1 (ア 春分の日または秋分の日 イ 冬至の日 )の南中高度との差とほぼ等しい。
ここで南中高度の求め方
夏至は 90ー緯度+23.4
冬至 90―緯度ー23.4
この23.4°というのが、公転面に垂直な方向に対しての地軸の傾きである。
夏至の南中高度ー春分秋分の日の角度=90―緯度+23.4ー90+緯度=23.4
になり、この地軸の傾きと同じになる
夏至の南中高度ー当時の南中高度=90―緯度+23.4ー90+緯度+23.4=46.8
となり、地軸の傾きの2倍の角度になる。
よって、アが答えになる。
・熊本の南中高度と札幌の南中高度に、年間を通して一定の差が見られるのは、熊本と 札幌の2( ア標高 イ経度 ウ糖度)のちがいによるものである。
南中高度は緯度によって決まるので ウが答えになる
この問題のポイント
- 地球の自転と太陽の日周運動という基本的な知識を問う問題
- 比を使った計算問題
- 南中高度を図に表す問題
- 資料を読み解く問題
- 地軸の傾きに関する問題
と幅広く出題されている。そして、この問題では出題されていない次の事柄も解けるようにしておきたい。
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