トウモロコシの種子の発芽のときにおこること(2017年滋賀)
出題の意図
種子の発芽に関しては教科書に書いていない。そして、発芽条件に何が必要かについてはそんなに重要ではない。この問題では、「この実験ではどのような仮説のもとに行っているのかを答える」というのが目的である。
そのため、実験で何をしているのかを判断する力が必要である。
【実験1】
<方法> 1 図1のように,表の条件でトウモロコシの種子を入れたペトリ皿を3つ準備する。
2図1のペトリ皿を明るい室内に置き、3日後、発芽しているかどうかを調べる。
<結果> 表は,実験した条件と結果をまとめたものである。
結果からわかること
AとBの違い 発芽に光が必要かどうか
A 室内の明るいところで、水をしみこませたろ紙の上におく→発芽した
B アルミはくで暗くして 水でしみこませたろ紙の上に置く。→発芽した
光と発芽には関係がない
AとCの違い 発芽に空気が必要か
A 空気に触れている条件で発芽させる→発芽した
B 沸騰させて水に溶けている酸素も追い出した水の中で発芽させる→発芽しなかった
発芽には空気が必要
BとCの違い
同じ条件にしているものがないのでこの二つからはわからない。
他に必要なものとしては、光を当てないで空気もない状態
沸騰水を冷やしたものに種を浸らせて、アルミ箔でペトリ皿をおおうというのも必要である。
そうでないと、光があるから、空気がないと発芽しないというのを確かめていないからである。このようなものを用意することを対照実験という。
対照実験でどのようなものが必要かという出題もあるのでこの問題では聞かれていないが答えられるようにしておこう。
種子の発芽条件として
水、空気、温度、光のうち、
仮説 発芽には光が必要である
発芽には空気が必要である
という二つを見ているんだなぁというのを見ながら、問題を見ると、
「仮説を答えなさい」という問題がある。
仮説を考える
トウモロコシの種子の発芽に必要な条件について、 どのような仮説を立て,実験1 を行ったと考えられますか。下のアからエまでの中から2つ選びなさい。
ア 適当な温度が必要である。
イ 空気が必要である。
ウ 光が必要である。
エ 水が必要である。
イ、ウと即答できるようにしておこう
ア 適当な温度に関しては、山口県のような問題が考えられる
水の条件に関してはルラしていないろ紙の上に種子を置いたものを用意して、それが発芽するかでAと比較する。
これにたいしても、種子を油の中に入れて、空気を遮断する、
アルミはくで包んだものという対照実験を用意しなければならない。
そして、今回出題されていないが、水の条件でどのようになったら水が発芽には必要といえるか。(乾いたろ紙の上では発芽しない)という見通しを持った答えもできるようにしておくこと。
水に関してどのような実験を計画し、どのような結果が得られれば水が発芽に必要だといえるか。
乾いたろ紙の上に種子を置いたペトリ皿を用意し、種子が発芽せず、水を湿らしたろ紙の上では発芽することから水が発芽に必要だといえる
温度に関してどのような実験を計画し、どのような結果が得られれば、適当な温度は発芽に必要といえるか。
湿らせたろ紙の上に種子を置いたペトリ皿を氷の入った水で覆い、冷やしたら発芽しないことから、発芽に適当な温度が必要だといえる
胚乳にはデンプンがある。発芽するとデンプンがなくなる
【実験2】
<方法>
1 図2のように、発芽する前のトウモロコシの種子を切り、断面にヨウ素液を落として色の変化を調べる。 2十分に発芽したトウモロコシの種子について,1と同様に色の変化を調べる。
<結果>
発芽する前のトウモロコシの種子は、図3のように青紫色に変化した部分があった。一方,十分に発芽 したトウモロコシの種子では、青紫色に変化した部分はなかった。
デンプンが分解される仕組みを調べる
【実験3】
<方法>
1 うすいデンプン溶液に、炭水化物である寒天 を加え、加熱してとかし,ペトリ皿に流し込み固める。
2 図4のように,1のペトリ皿の上に,だ液をペトリ皿 落とし、ペトリ IIIの別の場所に,発芽し始めた トウモロコシの種子を置く。
3 2日後、ペトリ皿にヨウ素液を落として,色 の変化を調べる。
<結果>
図5は、実験の結果を示したものである。
だ液の中の酵素と発芽の時に出される酵素
3 実験3の結果から,発芽し始めたトウモロコシの種子から,だ液と同じはたらきをする物質が出てい ると考えられます。だ液にはどのような消化酵素が含まれていますか。その名称を書きなさい。
アミラーゼ
中学校で習うのは消化酵素
デンプンを分解する アミラーゼ
タンパク質を分解する ペプシン、トリプシン
脂肪を分解する リパーゼ
を学習する。
酵素が特定の物質とのみ反応する
体内の温度の時一番よく反応する
中性、酸性、アルカリ性など反応する液性がある
という酵素の性質もある。これもあわせて出題されることが多い
【話し合い】
太郎さん :実験1,2,3の結果から、トウモロコシの種子は発芽するためのエネルギーをどのようにとり出しているのか考えてみよう。
花子さん : 植物の成長には,光合成が関係していたね。だから、トウモロコシの種子が発芽するときも光合成を行ってエネルギーをとり出しているのかな。
太郎さん :実験1の結果から、発芽するときに光合成は関係していないと思うよ。調べてみると,動物も植物も,細胞内で栄養分から生きるためのエネルギーをとり出すしくみは同じだとわかったよ。
4 話し合いの下線部のように考えられるのはなぜですか。実験1の結果をもとに、理由を書きなさい。
最近の問題には会話文が多く出題される傾向がある。会話文の問題の時は最初に、何を出題されるかをチェックしてから読むこと。
ここでは、「発芽するときは光合成は関係しないことを実験1から理由を書きなさい」
という問題を読んでから、会話文を読む。
実験1では、トウモロコシの発芽には光が関係していないことが分かっている。
(二酸化炭素、温度の条件は行っていないからわからない)
そこで、光に関して理由を答える。
実験1で光合成に必要な光が無くても発芽したから
5 実験1,2,3の結果と話し合いから考えて, トウモロコシの種子は発芽するためのエネルギー をどのようにとり出していると考えられますか。書きなさい。
実験2からデンプンが分解されているということ
実験3からデンプンを分解したのはアミラーゼであるということがいえるので
この二つを合わせて答えにする。
種子の中の物質を分解した物質からエネルギーを得ている
発芽には、ジベレリンという植物ホルモンによりデンプンが分解され、糖を作りその糖をエネルギーとしては発芽している
ポイント
実験の仮説を考える
その仮説が正しくなるような結果はどのようなものか
これを考えさせる問題が増えている。