【中三応援プログラム】琵琶湖の微生物(2019年)
滋賀県の問題である。
琵琶湖に関する問題ということでご当地問題である。
滋賀県の面積のある湖
最近は貯水量が減っていることで話題になっています。
琵琶湖を出題するのは滋賀県らしいですが、他県でも「ある湖では」という出題で湖の微生物についての出題がある。
太郎さんは、琵琶湖の生物どうしのつながりに興味をもち、調べ学習や実験を行いました。後の1 から5までの各問いに答えなさい。
生物同士の関係
太郎さん:琵琶湖の生物どうしの間にはどのような関係が見られるのかな。
【調べ学習】
琵琶湖の生物の食べる・食べられるの関係について調べた。生物の食べる・食べられるの関係を模式 的に表すと図1のようになった。図中の矢印は、食べられる生物から食べる生物に向かってつけてある。
1 調べ学習で,図1のような,生物の食べる・食べられるの関係のつながりを何といいますか。書きなさい
食べる・食べられるの関係のつながり 食物連鎖
食物連鎖の似た言葉に「食物網」がある。これと食物連鎖の違いは
食物連鎖は1対1の食べる・食べられる関係で直線的
食物網は 食物連鎖が直線的ではなく、網目状に絡み合っていること
また、落ち葉などか生物の遺骸から始まる分解者の連鎖を腐食連鎖という。
消費者はどれか。
2調べ学習の図1で、生態系における役割から消費者とよばれる生物はどれですか。下のアからエまでの中からすべて選びなさい。
ア アオミドロ イ ミジンコ ウ アュ エ マス
ここではアオミドロだけである。
イは植物プランクトンを捕食する消費者
ウはプランクトンを捕食する消費者
エは小型の魚を捕食する消費者
よって、イウエ
微生物の実験
太郎さんは、琵琶湖の微生物のはたらきについて,学習した微生物の実験を参考にして実験1を計画 し行いました。
【実験1】
<方法>
1 琵琶湖から採集してきた泥に水を加え、よくかき混ぜた後,図2のように布でこし、ろ液をつくる。
2図3のように、三角フラスコAには1のろ液を入れ、三角フラスコBには三角フラスコAと同量のろ液を沸とうさせ冷ましたものを入れる。三角フラスコA,Bに,同量のうすいデンプン溶液を入れ,透明なフィルムでふたをし、暗い場所に置く。
31週間後,三角フラスコ A, B内の二酸化炭素の体積の割合を,気体検知管で調べる。
4その後,三角フラスコA,Bの液に、ヨウ素液を加えて色の変化を調べる。
<結果>
表1は,実験の結果をまとめたものである。
沸騰した水を使う理由
【話し合い】
花子さん:実験1の三角フラスコBに、ろ液を沸とうさせ冷ましたものの代わりに水を入れ,うすいデンプン溶液を加えた液で実験したらだめなのかな。
太郎さん:その実験方法では、実験の結果が泥の中にいる微生物のはたらきだとはいいきれないと思うよ。
花子さん: どうして、いいきれないのかな。
水を入れたらなぜいけないのか?
3話し合いの下線部について,実験1で,三角フラスコBに、ろ液を沸とうさせ冷ましたものの代わりに水を入れ,うすいデンプン溶液を加えた液を使った場合には,泥の中にいる微生物のはたらきだとは いいきれないのはなぜですか。その理由を書きなさい。
沸騰させる目的は、中に含まれる微生物を殺すためである。この実験では微生物があるかないかでデンプンが分解されるかどうかを調べる必要がある。
加えるデンプン液に微生物が入っていたらこの実験は微生物の有なしかどうか。それともデンプン液によるものかはわからなくなってしまう。そこで、はじめに水を沸騰させたものでデンプン液を作る必要がある。
このように
微生物のはたらきの有無以外の条件はそろえて、実験しないとその結果が微生物の働きによるものなのかどうかわからないから、
デンプン液を作るときは沸騰させる。
微生物の働き
4 調べ学習や実験1の結果から,琵琶湖の微生物はどのようなはたらきをしていると考えられますか。 「有機物」と「呼吸」という2語を使って書きなさい。
実験1の結果から
沸騰しない琵琶湖の水・・・デンプン(有機物)が分解されるためヨウ素液は反応しない
沸騰させた琵琶湖の水・・・デンプン(有機物)が分解されないためヨウ素液は反応し、青紫色に変わる
微生物は呼吸によって、生物の遺骸などの有機物を二酸化炭素などに分解することでエネルギーを取り出している。
仮説を立てて実験をする
実験1を行ったとき,太郎さんは,微生物のはたらきについて新たな疑問をもちました。そして,その 疑問を解決するために、ある仮説を立てて実験2を計画しました。
【実験2】
<方法>
1 琵琶湖から採集してきた泥に水を加え,布でこしてつくったろ液とうすいデンプン溶液を,それぞれ同量入れた三角フラスコC,Dを用意する。
2図4のように,三角フラスコDには,フラスコ内の液に空気を送り込むため、エアーポンプを設置する。
3 三角フラスコC,Dを暗い場所に置く。
4 毎日同じ時刻に,図5のように,三角フラスコC,Dの液を試験管に少量とり、ヨウ素液を加え て色の変化を調べる。
<結果> 表2は,実験の結果をまとめたものである。
5実験2の結果から,太郎さんの立てた仮説は正しいことがわかりました。太郎さんは、どのような仮説を立てて実験2を計画しましたか。下のアからエまでの中から1つ選びなさい。
ア三角フラスコの液中の酸素が多くなれば,微生物のはたらきが活発ではなくなる。
イ 三角フラスコの液中の酸素が少なくなれば,微生物のはたらきが活発になる。
ウ三角フラスコの液中の酸素が多くなれば,微生物のはたらきが活発になる。
エ微生物のはたらきには,三角フラスコの液中の酸素の量は関係がない。
仮説を立てて実験を行う。これが2021年度から始まった中学校の学習指導要領のテーマになっている。
何か与えられたことがあって実験して調べるを発展させ
自分で疑問を持ち、その問題を解決する能力を育てる学習(問題解決能力の育成)
このため、ここ数年このような問題が多い。
この実験では、土をこして作ったろ液に一方はそのまま
一方はエアーポンプで空気を送り込んでいる。
エアーポンプを使っているということは酸素を送り込んでいるわけである。
選択肢のアとウは逆の関係であり、
Cのフラスコだけを見ると、酸素を与えなければ微生物が活性化しないというのを示しているように見える。
しかし、アを確かめるなら、ビーカーに栓して空気を抜いたものと抜かないものという比較をすべきである。
フラスコCは栓をしておらず、酸素を入れないという条件では未完成である。
そのため、ウのように、酸素を入れたら微生物が活性化するというのを確かめたと考える方が考えやすい。
結果は仮説が正しいということなので、ウを仮説したと考えられる。
さて、微生物の中には酸素があると活発に活動する好気性細菌と酸素があると活発に活動しない嫌気性細菌がいる。
好気性細菌は活動量が大きいので、この実験ではすぐに結果が出るが嫌気性細菌は活動量が好気性細菌よりは小さいのですぐに結果が出ない。
そのため、「琵琶湖の水には好気性細菌が4有機物を分解している」とだけ結論付けてはいけない。
また、実験2は光の当たらないところで行っているが、光を利用する生物も考えられる
また空気中の微生物が入って着て反応させている可能性もある
中学レベルの実験では、採取した土以外の条件の中に空気中の細菌による影響というのを小さく考えがちなので、実際にこの実験を行ったらこの資料のようにはうまくいかないと考えられる。