外来種のもたらす影響(2017年香川)
下の図IIIは、ある池の魚類の生態調査を目的として定置網で捕獲した主な魚類について,漁獲量の経年変化を示したものである。あとの文は、図IIから考えられるこの池の生態系の変化に ついて述べようとしたものである。文中のP,Qの ( )内にあてはまる言葉として最も適 当なものを、あとの1~3からそれぞれ一つずつ選んで、その記号を書け。
1995年までは、全体の漁獲量が多く、体の大きなコイ類から体の小さなタナゴ類まで、 大小さまざまな魚類を捕獲することができた。しかし、1996年以降に、(P )が捕獲 されるようになってからは、全体の漁獲量が大幅に減少した。特に,1996年以降は,(Q )が、1997年以降はモツゴ類がほとんど捕獲できなくなっている。このことか ら(P )が捕獲されるようになってから、この池の生態系が大きく変化したことが推 測できる。
ア バス類 イ コイ類 ウ フナ類 エ モツゴ類 オ タナゴ類
資料を読み取る問題である。
1995年まで、この池にはいろいろな種類の魚がおり、その数も多かった。
しかし、1996年から魚の数が減ってきた。それは1996年前までにいなかった生物が1996年にこの池に入ったためと考えられる。
1996年以降にバス類が捕獲されるようになる。それまで多くいた、タナゴ類が大きく減少している。
バス類が食物網を破壊したため、それに伴い、タナゴ類の数が急激に減少した。
タナゴ類を取り巻く食物網が変化するとモツゴ類にも影響を与える。モツゴ類を取り巻く食物網が変化していく。その結果、この池の生物の多様性は失われ、生物全体の数が減少したと考えられる。
Pはア バス類 Qはオ タナゴ類
バス類、コイ類 フナ類 タナゴ類 モツゴ類というのは魚の総称である。
バス類が大形で肉食の魚で何でも食べる
コイ類 フナ類が小魚などを食べる
モツゴ類 が小さな虫などを食べる
タナゴ類 が動物プランクトンなどを食べる
タナゴ類が減るとタナゴの稚魚などを餌にしているモツゴ類が減る。モツゴ類が減るとコイ類、フナ類が減る。
生態ピラミッドでは、ある種の生物が減った時、上位の位置にいる生物が減ることでその種の数が回復する。
しかし、バス類は、タナゴ、モツゴ、コイ、フナのすべてを捕食する生物である。
タナゴが減って、モツゴが減ると、タナゴの数が回復すると思われるが、回復するタナゴをモツゴよりも多くバス類が捕食するためモツゴは増えない。
タナゴ類が減ることによって動物プランクトンが増えると考えられるが、その動物プランクトンもバス類は食べるためタナゴの数は回復できない。
動物プランクトンが減ると植物プランクトンや水草が増えるが。水草もバス類は食べるので水草も増えない。
外来種って何?
もともと生息していなかった地域に、人間の活動によって持ち込まれて定着した生物のことを外来種という。
外来種は、その場所にもともと住んでいた生物の生存や多様性をおびやかす場合がある。
その一つとして、ブラックバスの問題である。ブラックバスという名前の魚は存在しない。
ブラックバスというのはオオクチバスの仲間などの魚の総称で、動いているものなら何でも食べる魚。
動いているものに食いつくという習性があるので、えさをつけていないルアーを餌に似せて動かすことでブラックバスを吊り上げるというゲームフィッシングという釣りの標的になる。
日本にはもともといない魚で北アメリカにいた魚であるが、このバス釣りをするために、日本各地の川や池に人間が持ち込んだといわれている。
ブラックバスはなぜ問題になるのか?
その川や池にいた生物を何でも食べてしまうから、その川や池の食物網が壊れる。
食う生物と食われる生物の一対一の関係は食物連鎖といわれる。生物は複数の生物間でこの食物連鎖が行われているのでその関係は網のように複雑になっている。これを食物網という。
この食物網の網をくいやぶっていくもの、それがブラックバスなのである。とくにオオクチバスやブルーギルは問題になる。様々な生物を餌にするため、その川や池の生物の多様性が失われる。
多様性が失われると食物網が小さくなる。食物網が小さくなると生物全体の量が減っていくのである。
外来種によって琵琶湖の魚が減少する
外来種が生態系に与える影響