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金属線の長さ、断面積と抵抗の大きさの関係(2016年山口)

高校物理基礎レベルの問題

 

中学では、主に科学の現象について学び、高校ではそれを発展させて理論を学ぶ。

 しかし、最近の入試では高校で習う理論が中学レベルの知識で解けると判断され出題されることが多い、次の問題もその一つである。

抵抗の大きさは長さに比例し断面積に反比例する

どんな金属にも抵抗があることに興味をもったYさんは,金属線の抵抗について調べることにした。Yさんは、見通しをもって調べるために,金属線の抵抗について次の仮説 をたてた。

[仮説I]金属線の長さが変わると抵抗も変わるのではないか。
[仮説 II] 金属線の太さが変わると抵抗も変わるのではないか。

これらの仮説を検証するために,金属線などを用意し,次の実験を行った。あとの (1)~(4)に答えなさい。

[用意した金属線]

種類:ニクロム

太さ(直径):0.1mm, 0.2mm, 0.3mm, 0.4mm, 0.5mm 長さ:各10m

[仮説I]の検証

<準備>

太さが0.1mm の金属線を, 1.0m, 1.5m, 2.0m, 2.5m, 3.0mの長さにそれぞれ 切断し,金属線A,B,C,D,Eとした。

電源装置

<実験>

1  図1のように金属線 A,電源 図1 装置,202 の抵抗,電流計を直列 につないだ。
2  金属線Aの両端にかかる電圧 を測定できるように,図1の電流計 回路に電圧計をつなぎ,電源装置 のスイッチを入れ,電圧計の値が0.5Vになるように調節した。
3  電流計の値を読み, 電源装置のスイッチを切った。その後, 結果をもとにして, 金属線Aの抵抗を求めた。
4  金属線Aを金属線B, C, D, Eにかえて, 1~3の操作を行った。表1は, 結果をまとめたものである。

 

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見透しをもって調べる

新学習指導要領のテーマは見通しをもって調べるである。

仮説を立て、その仮説が正しいかどうかを調べる方法を考え、そして実験をし、考察をする。その考察に基いて次の実験を考える。

 

1 P  Plan 計画

2 D  Do   実行

3 C  Check 評価

4 A  Action 改善

PDCAサイクルとよばれるのは1→2→3→4→1・・・というようにサイクルとして繰り返すことである。

このPDCAサイクルで物事を考え、実践するというのが求められている力である。

金属線の抵抗に関してもこのPDCAサイクルが使われている。

実験結果

表1

 

金属線の長さ(m)

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

電流計の値(mA)

166

100

71

60

50

金属線の抵抗(Ω)

3.0

5.0

7.0

8.3

10.0

 

金属線の長さと電流計の値の関係をグラフにすると反比例する。

f:id:gomasan8:20210810072508p:plain

金属線の長さと抵抗の大きさは比例する。

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 これは、電流の流れを水の流れにたとえた水流モデルで説明されることが多い。

水流で川の流れが細いところが抵抗でその細い箇所が長ければ長いほど抵抗が大きくなるというモデルである。

 抵抗の大きさは オームの法則V=RIより、I=\dfrac{V}{R}で、抵抗の大きさに反比例するので、抵抗の大きさが長さに比例すれば、電流の大きさが反比例する。

 

回路図の作成

 

図2は、図1の回路を表したものである。[仮説I] の検証の下線部について,電圧計 はどのように接続すればよいか。適切な接続になるように,図3に電圧計の記号 1 を かき加えて,回路図を完成しなさい。

f:id:gomasan8:20210810063309p:plain

 

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電流計は直列接続、電圧計は並列接続である、図2は電流計が直列につながっている。

電圧計は下線部の通りに金属線Aの電圧を測るのだから、金属線Aと並列につなぐ。

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20Ωの抵抗にはつながない。回路の接続の「・」をかく。

 

グラフの作成

 

(3) 表1をもとにして,「金属線の長さ」と「金属線の抵抗」の関係を表すグラフを図4 にかきなさい。

 

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仮説Ⅱの検証

(4) Yさんは,[仮説I]の検証で行った実験と同じ手順で,[仮説 II ] の検証を行うことにした。[仮説 II ] の検証では, 金属線Aはかえずに, 金属線B~Eを[用意した金属線] から新たに切り出した金属線B'~E'にかえて実験することとする。正しく検証する ためには,金属線B'~E'の太さと長さはどのように準備すればよいか。それぞれ 書きなさい。

 

金属線Aは変えないで行っている。

金属線Aは太さ0.1mm 長さ1.0mである。

仮説Ⅱは太さだけを変えて、抵抗の大きさを調べるのだから

 B 太さ 0.2mm  長さ 1.0m

 C 太さ 0.3mm  長さ 1.0m

 D 太さ 0.4mm  長さ 1.0m

 E 太さ 0.5mm  長さ 1.0m

 

を準備する。

金属線の長さ、断面積と抵抗の関係

 山口県の問題はここまでになっている。金属線の長さや太さにおける抵抗の大きさの変化は高校レベルだからである。

 そのため、グラフを作成しても、「このグラフからどのようなことがわかるか」という出題はされていない。(答えは比例関係)

 

断面積を大きくすると、水流モデルと同様に 川の幅が大きくなると考える。

川幅が大きくなると、抵抗の値は小さくなる。このため、太さと抵抗の大きさは反比例する。

 

電流と抵抗の大きさは反比例なので、太くなるほど電流は大きくなり、比例の関係になる。

 

抵抗の大きさは 次のように表される。

R= ρ\dfrac{L}{S}  [Ω]

この式の中で使われている記号はそれぞれ、

R :抵抗 [Ω]
ρ :抵抗率 [Ω⋅m]
L :金属線の長さ [m]
S :金属線の断面積(太さ)〔 m^2

 抵抗率は金属線によって変わる定数である。長さLに比例し、太さSに反比例する。

 

実際にこの金属線での抵抗率を求めてみる 断面を半径が太さの半分の円とする

 金属線Aより 

金属線の長さが1m、太さが0.1mmのとき、抵抗の大きさが3Ωより

S= \pi \times  \left(  \frac{0.05}{1000}  \right) ^2

= \pi \times  \left(  \frac{5}{100} \times  \frac{1}{1000}  \right) ^2

= \pi \times   \left(  \frac{5}{10^5}  \right) ^2

= \pi \times  \left(  \frac{25}{10^{10}}  \right)

 

直径が2倍になると 抵抗の大きさは \frac{1}{4}倍になる。

直径が3倍になると 抵抗の大きさは  \frac{1}{9}倍になる。

直径が4倍になると 抵抗の大きさは \frac{1}{16}倍になる。

直径が3倍になると 抵抗の大きさは  \frac{1}{25}倍になる。

 

その結果、仮説Ⅱで実験を行うと次のような結果になると予想される。断面積は太さの2乗に比例するので次のような関係が得られる

金属線の長さ(m)

B‘

C‘

D‘

E‘

電流計の値(mA)

166

664

1494

2656

4150

金属線の抵抗(Ω)

3.0

0.75

0.33

0.19

0.12

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抵抗の大きさは二乗に反比例するので

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 太さと電流の大きさは比例直線にはならない

 太さと抵抗の大きさは二乗に反比例した曲線になる。

これは高校レベルであり、中学での問題では出題されない。


ポイント

 山口県では2016年よりこのような、PDCAサイクルを使った「見通しを持った実験」に関する出題を出している。扱う実験は高校レベルのため深入りはしていない。

 高校レベルの問題を出すのは2021年千葉県の問題でも磁界の中で電流が受ける力についてというのが出題されている(ローレンツ力)の説明

 電気分解において、電圧が同じ場合、並列と直列ではどちらの方が電極に多くの物質がたまるか。(ファラデーの法則)

  などである。

 そして、結果から考えられることという考察もしていないが、仮説が正しくなるような結果を得るにはどのようなものになるのかという出題はされている

 

このような出題は秋田、静岡などで多くみられる問題である。今後、このような問題が全国各地で増えると考えられる。

 

 また2021年大阪のカイロの問題のように実験結果からの考察も中学の授業で習うことを超えるものも出題されている。

 

思考力 判断力に関する問題が増える傾向にある。